被害者の治療が長引いたり、加害者との話し合いがつかないなどの理由で、請求手続ができていない場合には時効に気をつける必要があります。
法律で定める時効期間が経過すると、その権利が消滅してしまうのが消滅時効です。
被害者がいつまでも請求をしないと、権利が消滅し、損害賠償を請求できなくなります。
なお、時効は一方の債務者側がその主張(援用)をしなければ成立しません。
交通事故のような不法行為の時効は3年です。 損害賠償請求権は3年を経過したときに、時効によって消滅します。
起算日は、損害賠償の請求権は「損害および加害者を知った時」から数えられます。
後遺障害の損害賠償請求権は、後遺症が出てから3年間です。
時効の進行は 請求、差押え・仮差押え・仮処分、承認により中断させることができます。
被害者の請求により、加害者から治療費の支払いがあれば、そこから進行します。
このように時効は権利の得喪に直結します。迷ったときには、必ず専門家にチェックしてもらい、中断の手続きを取ってもらった方が安心でしょう。
第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
第19条 第16条第1項及び第17条第1項の規定による請求権は、3年を経過したときは、時効によつて消滅する。
第75条 第16条第4項若しくは第17条第4項(これらの規定を第23条の3第1項において準用する場合を含む。)又は第72条第1項の規定による請求権は、3年を経過したときは、時効によつて消滅する。
第95条 保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び保険料積立金の払戻しを請求する権利は、3年間行わないときは、時効によって消滅する。
2 保険料を請求する権利は、1年間行わないときは、時効によって消滅する。
保険法(平成22年4月1日施行)の制定と同時に自賠法も改正され、時効期間が3年に延長されました。
第166条 消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
第167条 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
○ 2 債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。
第145条 時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
第147条 時効は、次に掲げる事由によって中断する。
- 請求
- 差押え、仮差押え又は仮処分
- 承認
第148条 前条の規定による時効の中断は、その中断の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
第149条 裁判上の請求は、訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。
第150条 支払督促は、債権者が民事訴訟法第392条に定める期間内に仮執行の宣言の申立てをしないことによりその効力を失うときは、時効の中断の効力を生じない。
第153条 催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事審判法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。
第171条 弁護士又は弁護士法人は事件が終了した時から、公証人はその職務を執行した時から3年を経過したときは、その職務に関して受け取った書類について、その責任を免れる。
後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効に関する判決
判例 平成16年12月24日 最高裁二小 平成14年(受)第1355号
高裁の判断は自算会の認定日以降としたが、
「被上告人は,後遺障害等級表12級12号の認定を受けるまでは,本件後遺障害に基づく損害賠償請求権を行使することが事実上可能な状況の下にその可能な程度にこれを知っていたということはできないから,被上告人の本件後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点は,(注、自算会による)上記認定がされた時(注、平成11年7月30日)以降であると解すべきである。」
最高裁は、原判決を破棄、原審に差し戻しとした。
その理由は,次のとおりである。
「(1) 民法724条にいう「損害及ヒ加害者ヲ知リタル時」とは,被害者において,加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に,それが可能な程度に損害及び加害者を知った時を意味し(最高裁昭和45年(オ)第628号同48年11月16日第二小法廷判決・民集27巻10号1374頁参照),同条にいう被害者が損害を知った時とは,被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解するのが相当である(最高裁平成8年(オ)第2607号同14年1月29日第三小法廷判決・民集56巻1号218頁参照)。
(2) 前記の事実関係によれば,被上告人は,本件後遺障害につき,平成9年5月22日に症状固定という診断を受け,これに基づき後遺障害等級の事前認定を申請したというのであるから,被上告人は,遅くとも上記症状固定の診断を受けた時には,本件後遺障害の存在を現実に認識し,加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に,それが可能な程度に損害の発生を知ったものというべきである。」
「そうすると,被上告人の本件後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効は,遅くとも平成9年5月22日から進行すると解されるから,本件訴訟提起時(注、平成13年5月2日、相手方は消滅時効を援用)には,上記損害賠償請求権について3年の消滅時効期間が経過していることが明らかである。」
債権の種類 | 期間 | 摘要 |
---|---|---|
【ホテルなど関連】 | ||
旅館(ホテル)の宿泊料 | 1年 | 民法174条四 |
理容師、クリーニング代 | 2年 | 民法173条二 |
工事の設計・施工・監理(終了時より) | 3年 | 民法170条二 |
医師、薬剤師の診療報酬(医療費) | 3年 | 民法170条一 |
運送費 | 1年 | 民法170条三 |
【商取引関係】 | ||
商人間の売掛債権 | 2年 | 民法173条一 |
商行為による債権 | 5年 | 商法522条 |
給料債権 | 2年 | 労基法115条 |
退職金債権 | 5年 | 労基法115条 |
手形債権 | 3年 | 手形70条、77条 |
電子記録債権 | 3年 | 電子記録債権法23条 |
小切手債権 | 6ヶ月 | 小切手51条 |
債権者の保証人、業者5年 | 10年 | 商法522条 |
PL法の製造物責任 | 3年 | 製造法5条 |
【報酬関係】 | ||
弁護士、公証人(事件終了から) | 2年 | 民法172条 |
俳優、歌手、プロスポーツ選手報酬 | 1年 | 民法174条二 |
介護報酬請求権 | 2年 | 介護保険200条① |
学校、塾の授業料、月謝 | 2年 | 民法173条三 |
【民事債権】 | ||
一般の民事債権 | 10年 | 民法167条① |
損害賠償請求権(不法行為) | 3年 | 民法724条 |
定期給付債権 | 5年 | 民法169条 |
管理費請求 H16.4.23最高裁 | 5年 | 民法169条 |
料理店、飲食店(バーなど)の飲食代 | 1年 | 民法174条四 |
利息債権 | 5年 | |
離婚の慰謝料 | 3年 | |
消費者金融からの借入れ | 5年 | 商法522条 |
個人間の売買代金、貸金債権 | 10年 | |
確定判決、裁判上の和解、調停等 | 10年 | 民法174条の2 |
レンタカー、レンタルビデオ料金 | 1年 | 民法174条五 |
家賃、地代債権 | 5年 | 民法169条 |
消費者契約の取消権 | 追認・6ヶ月 契約から5年 | 消費者契約法7条 |
未成年者などの契約の取消権 | 追認・5年 行為から20年 | 民法126条 |
【その他債権】 | ||
療養費、傷病手当金、埋葬料、出産育児一時金、出産手当金、 高額療養費、高額介護合算療養費の給付請求権 | 2年 | 健康保険193条 |
療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付(業務災害)二次健康診断等の給付請求権 | 2年 | 労災保険42条 |
療養給付、休業給付、葬祭給付、介護給付の請求権(通勤災害) | 2年 | 労災保険42条 |
障害補償給付、遺族補償給付、障害給付、遺族給付の請求権 | 5年 | 労災保険42条 |
失業等給付請求権(求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付 及び雇用継続給付) | 2年 | 雇用保険74条 |
【公法上の債権】 | ||
国税の徴収権(援用を要しない) | 5年 | 国税通則72条 |
地方税の徴収権(援用を要しない) | 5年 | 地方税18条 |
金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利(援用を要しない) | 5年 | 地方自治236条 |
【公訴時効】(資料):犯罪行為が終つた時から進行する | 刑訴法253条 | |
長期10年未満の懲役若しくは禁錮に当たる罪 | 5年 | 刑訴法250条②五 |
長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪 | 3年 | 刑訴法250条②六 |
拘留又は科料に当たる罪 | 1年 | 刑訴法250条②七 |
親告罪の告訴 | 犯人を知つた日から6カ月 | 刑訴法235条 |
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