交通事故と裁判

刑事責任とは犯人が国家から刑罰をうけることです。交通事故を起こして人を死傷させると、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転死傷処罰法」という)5条に該当するので、「7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」に処せられます。これが過失運転致死傷罪です。

民事上は損害賠償責任が認められても、刑事事件で有罪とならない場合もあります。犯罪事実の認定方法の違いから、民事裁判よりも厳格な証明を要する刑事裁判には「疑わしきは罰せず」の理論がはたらくからです。

刑事事件で重要なのは検察官の役割です。検察官は公益の代表者として、犯罪捜査はもちろん被疑者の起訴から公判手続き、判決の執行までを担当します。

刑事事件の処理手続きを規定した法律が刑事訴訟法(以下、「刑訴法」という)です。検察官は、一方の当事者として、法に従って捜査や刑事訴訟の手続きをすすめます。

交通違反や交通事故の裁判は、そのほとんどが略式命令であり、書面審理のみで処理されています。いわゆる罰金刑のものです。

重大な事故で、検察官によって起訴され、公判請求される事件は業務上過失事件の1%にも満たないのが現状です。


刑事訴訟法ではどうなっているのか

交通事故の発生

 110番通報を受け、事件の発生を知る

画像の説明


  • 警察官の捜査

取調官の取調べ(刑訴訟198条①)
供述調書が作られる(同198条③)
この調書は公判の証拠にもなる(同322条)

検察官に送致される。

  • 検察官の捜査

    書類等を受理後、関係者の違反事実の取調べ(同191条)


    (検察庁に出頭)
    捜査終了後、
    公訴を提起するかどうかを決める

    簡易裁判所に略式命令を請求(同461条)

    地方裁判所に公判請求(同247条)
    不起訴(起訴猶予など)(同248条)

略式命令の請求(略式裁判)

交通違反を取調べ中の被疑者は起訴される(起訴状)と被告人と呼ばれます。一方の当事者が公益を代表する検察官です。

略式起訴(同461条)

被告人に異議がなく、検察官が「略式裁判」による処理が適当と判断した場合は正式裁判(公判)を経ることなく、書面審理だけで刑が言い渡されます。(同43条②)

略式命令の請求は公訴の提起と同時になされます。(同462条)

被告人に対する罰金又は科料が100万円以下の場合の事件に限られます。(同461条)                              

被告人は略式命令送達の日から14日以内に正式裁判の請求ができます。

交通違反の初犯者で軽微な事件であれば、検察官から略式手続きの説明を受け、ほとんどが略式命令処分で済んでいる。


公判請求(通常の裁判)

逮捕から釈放まで

公判の請求

交通違反や交通事故の違反内容から検察官が罰金刑以上の処罰が適当と判断した場合は、略式裁判ではなく通常裁判、すなわち公開の法廷での裁判を開くよう裁判所に請求することがあります。
                         
公判手続き

検察官が、被疑者に対する起訴状を裁判所に提出(同247条)
起訴状を受理した裁判所は、その内容により被告人に対し処罰の判決を下す。(333条)

罰金や懲役刑などの量刑を決めるのは裁判官の判断です。


裁判所の判決

有罪だが、刑の執行を猶予(温情判決)

公判請求された場合でも、裁判官が前科もなく、今後同様の違反を犯す可能性が少ないと判断を下したならば懲役刑の前に執行猶予がつく場合が多いであろう。

»裁判所 即決裁判

交通違反だけでも悪質な違反を繰り返すと、実刑判決になる場合があります。

実刑判決

公判請求による結果、裁判官が有罪であると判断した場合、判決の内容の多くは禁錮刑又は懲役刑となります。

危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法2条)

過失運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法5条) 

過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(自動車運転死傷処罰法4条)

死亡事故であって、ひき逃げ、スピード違反、酒酔い運転、無免許運転などの場合には、悪質と考えられるので、実刑判決になるであろう。

»総務省統計局 交通犯罪送致状況 »日弁連 贖罪寄付は弁護士会へ


刑の執行

裁判が確定すると、検察官は宣告された刑の執行を指揮します。


罰金と反則金は別物

  • 反則金(道路交通法施行令45条別表第六)

交通事故を伴わない交通違反で、納付した時点で違反行為に対する処理が終了します。公安委員会による行政処分なので、前科にはならない。ただし、上記別表にないものや交通事故になった場合には、原則どおり刑事手続によります。

  • 行政処分については

»大阪府警察 交通反則金の納付方法について
                  

  • 罰金刑(1万円以上、刑法15条)

 この処分を受けると、刑事罰ですから前科扱いとなります。

»佐賀地方検察庁 罰金未納の方へ

  • 前科はどうなるのか(刑法)

第34条の2  禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。
2  刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。


解決のヒント

刑の減軽のためには、被害者への誠意が欠かせないようです。

  • 過失運転致傷罪の場合 »被害者と示談が成立しているのか
  • 過失運転致死罪の場合 »被害者の遺族の嘆願書を書いてもらえるのか

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